VFA入会申し込み 協賛をご希望の方

コラム

COLUMN COLUMN COLUMN
矢印記事一覧に戻る

フリーランス獣医師の責任とリスク

フリーランス 獣医師 転職
アバター画像 森田 慶
2024/01/09 更新

VFA代表の森田です。

皆様のお力添えもあり、最近ではフリーランスの獣医師というキャリアが認知され始めているように感じます。

今回のコラムではフリーランスの獣医師が負う責任やリスクについて解説していきます。

特に、これからフリーランスの獣医師として個人事業を始めようとしている方には必ず読んで頂きたい内容です。

フリーランスの働き方のメリット・デメリットどちらもご理解いただいた上で、ご自身に合ったキャリアかを検討して頂ければ幸いです。

✳︎このコラムでは”個人事業として開業し、動物病院と業務委託契約を結ぶ獣医師”と定義します。詳しくは過去のコラム「フリーランスの獣医師とは」をご参照ください。

賠償責任

通常の雇用契約とフリーランスの業務委託契約の大きな違いが賠償責任です。

個人事業主であるフリーランスの獣医師は被雇用者の勤務獣医師と違い、業務によって起こる全てに対して責任を負う義務が生じます。

これはフリーランスの性質というよりも、個人事業主と動物病院が結ぶ業務委託契約の性質によるものです。

例えば、

・獣医師が業務上の過失によって動物に怪我をさせてしまった
・獣医師の診療に携わる動物看護師が獣医師の過失によって動物に怪我をさせてしまった。
・獣医師が管理すべき動物が業務上の過失によって逃げてしまった

などの事故が起きてしまった場合、
過失の責任は診療を行った獣医師本人が負うべきであるという前提なのです。

こういったトラブルに備えるためにはあらかじめ動物病院と責任の所在を話し合い、

○:△の割合で獣医師と動物病院が賠償費用を請け負う”

賠償の上限は□を超えないものとする”

などの決まり事を契約書に記載しておくことがとても重要です。

こういった契約書の文言は、獣医師あるいは動物病院のどちらか一方にあまりにも不利なものである場合、認められない可能性もあります。

両者からみて公正な契約内容であるか、社労士さんや弁護士さんに必ず相談しましょう。


また、VFAでは2023年の12月より、フリーランス獣医師が個人でも入れる獣医師賠償保険を推奨しております。
詳細は協会会員ページ「protect+のご案内(会員特典あり)」もしくはprotect +ホームページをご覧ください。

偽装請負

個人事業主であるフリーランスの獣医師は動物病院と業務委託契約を結び診療を行います。

しかしながら、業務委託の体裁をとっていながら実態は指揮命令関係があり、労働者のように扱われている(雇用契約みたいな働き方をしている)場合、偽装請負という違法行為にあたり動物病院側が厚生労働省からの指導、罰則を受ける可能性があります。

獣医師にとっての業務委託とは本来、委託された業務(診療や手術、検査等)を受託した個人が首尾一貫して自己完結することです。

偽装請負を防ぐためには診療をある程度自己完結できるスキルが必要であると共に、

・業務の遂行に当たって指揮監督を受けない
・一箇所の動物病院の業務に専属していない
・社員と共同で、社員と同じ内容の仕事をしていない
・始業・終業の時刻や休憩・休日、作業場所が拘束されない
・時間給、日給、月給等、時間単位ではなく成果や作業内容単位で報酬が計算されている
・発注者の就業規則が適用されない

などの点に注意しなければいけません。


もちろん、どれかひとつでも当てはまらなければ即アウトというものではありませんが、総合的に見て業務委託契約と言える内容であるかが非常に重要です。

また、ここで重要になってくるのが契約書です。

・業務内容の範囲
・契約期間
・委託費用
・守秘義務・個人情報の取り扱い
・契約解除、解約
・損害賠償
・不可抗力
・再委託
・権利帰属

などを明記した、いわゆるちゃんとした業務委託契約書を用意する事で偽装請負ではないことを証拠として残すことができます。

万が一、偽装請負を疑われてしまった場合、必ず契約書のチェックが入ります。
契約書作成を怠ると、いざという時に自分だけでなく、提携先の動物病院が被害を被ってしまうのです。

また、動物病院によって上記項目の許容範囲や内容も大きく異なります。
個人事業主として動物病院と契約する際は偽装請負にならないよう、契約書を信頼できる弁護士さんに作成してもらいましょう。

社会的信用

会社員と比べ収入が不安定な個人事業主は社会的信用が低く、各種審査に通りづらいことがあります。

具体的には


・クレジットカードを作りづらくなる
・住宅ローンを組みづらくなる
・別事業の起業時に融資の審査が厳しくなる

といったことが挙げられます。

クレジットカードを作ったりローンを組んだりする予定がある人は、できるだけ会社員のうちに審査を済ませたほうが良いかもしれません。

あるいは後述する福利厚生のデメリットもありますので、副業OKの会社であれば会社員としての籍を残しながら個人事業主としての活動を行うダブルワークなどもオススメです!

社会保障の違い

「フリーランスになると福利厚生が無くなる」という話は皆さん聞いたこともあるかもしれません。

原則として、会社に所属している人は

・厚生年金(+国民年金)
・被雇用者健康保険(組合健保、協会けんぽ、各種共済組合)

に加入しており、その他にも休業補償、退職金、産休・育休など会社ごとの福利厚生の恩恵を受けることが出来ます。

個人事業主とその従属者は


・国民年金
・国民健康保険

に加入することが義務付けられてはいますが、内容が大きく異なるため注意が必要です。

〜年金の違い〜

国民年金+厚生年金のいわゆる二階建て保障と、国民年金のみの一階建て保障では(現在の年金制度において)支払う額や将来受給できる額がこのように変わります。

詳細は割愛しますが、ご興味のある方は以前森田が書いたnote「フリー獣医師と年金」を参照していただければと思います。

これらの数字はあくまで

・ずっと個人事業主として働いた場合
・現在の年金制度が今後も適応された場合

の数字ではありますが、フリーランスになるとその分将来の保障は手薄になります。

小規模企業共済や付加年金、その他の資産運用方法を活用し、“自助努力”には一層力を入れなければいけないのがフリーランスです。

〜保険・保障の違い〜

会社員の獣医師は健康保険、労働保険に加入しています。
これらに加入することで健康保険証をもらえる以外にも下記のような恩恵を受ける事ができます。

・傷病手当金
病気や怪我で働けなくなり、給料が出ない時に支給されるお金。お給料の約2/3が最大1年半支給される。

・出産手当金
出産のために会社を休んでお給料が出ない時に支給されるお金。産前42日-産後56日の間、お給料の2/3が支給される。

・扶養制度
健保に入っている人は一定の収入以下の家族を扶養に入れることができる。扶養に入った人(奥さん、旦那さん、子供)は保険料を負担することなく保険証をもらうことができる。

一方でフリーランスは国民健康保険に加入する事が義務付けられており、保険証をもらえることは変わりないのですが、上記の手当金や扶養制度がありません。

つまり、“休んでいる期間は収入が途絶える”ということです。

自分で決めたルールで働く以上、提携先の会社が守ってくれるということはありません。怪我や病気についても自己責任が伴います。
これに対しては、自身で民間の保険(医療保険や生命保険)に加入し備える必要があります。

まとめ

以上、フリーランスとして働く上で感じたリスクやデメリットについて解説させて頂きました。

フリーランスは自由である一方、行動には常に自己責任が伴います。
かっこいい言い方をするとリスクとベネフィットは表裏一体なのです。

リスクと上手に付き合うためには、

・責任の所在を明記した契約書
・万が一に備えての保障、保険への加入
・将来に備える貯蓄、資産運用
・信頼できる相談相手

が欠かせません。

フリーランスとして個人事業を開業する際は、慎重な判断が必要ですので、お困りの際はいつでも当協会にご相談ください!


ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
フリーランスの働き方にご興味のある方、ご相談はぜひVFAまでお問い合わせください。

VFA | 「フリーランスが活躍できる社会基盤をつくる」

・設立  2022年11月
・所在  東京本部住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-23-4 桑野ビル2階
・会員  個人会員18名 協賛病院8病院 協賛企業3社(2023年6月現在)
・電話  03-6822-2196
・メール vet.freelance4@gmail.com

私たちは動物医療業界においてフリーランスの働き方に関する情報を開示し、フリーランスを目指す獣医師を導き、支え、自分らしいキャリアの確立を応援します。

今社会に求められている流動的な働き方も、基盤がなければ不幸の種を生んでしまいます。
自由な働き方だからこそ、責任はつきものです。
VFAはささいな不安を相談できる団体です。

VFA活動を通してフリーランスの働き方が一般化することで、獣医師の代診、産休·育休、事業の承継などの持続可能な社会活動に貢献し、全ての獣医師が笑顔で働き人生を謳歌する社会を目指します。

無料Facebookグループ(メンバー187名)のご参加はコチラから

この記事を書いた人

アバター画像
森田 慶
獣医師。 2019年1月よりフリーランス獣医師として活動 都内を中心に計7ヶ所の動物病院にて診療業務に携わる。

この記事をシェアする

矢印記事一覧に戻る
全ての記事一覧

ライター

タグ

過去の記事

    下矢印